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▼2011年旅のコラム
62.小さな出会い-1
  ミラノ駅
63.小さな出会い-2
  トレノ(電車)
64.小さな出会い-3
  トレノ(電車)

ユーロスターでの不思議な出会い。
 ベルガモ滞在中、フィレンツェでお世話になったホームステイ先のファミリー宅へ、ミラノ中央駅から高速列車ユーロスターに乗り、日帰りで遊びに行った時だった。
 私の隣には品の良いシニョーラ(マダム)が座り、彼女の向いには小学生位の男の子が座っていた。ミラノの教会シニョーラはイタリア人だが男の子の肌の色は浅黒く、男の子とシニョーラの年齢にも開きがあった為、初め二人が親子だとは思わなかった。でもシニョーラの立ち振る舞いは明らかに母親で、日本で言う所の『教育ママ』そのもの。「早く宿題をしなさい!」と叱咤する母親に、男の子は嫌々教科書らしきものを広げつつも、「お腹がすいた」と甘えている。男の子はもらったチョコを食べながら、3の段の九九のドリルを始めた。
 私は勇気を出してシニョーラに話しかけてみた。男の子の名前はアルベルト、8歳。ボローニャのおじいちゃんの所に日帰りで遊びに行くのだと言う。アルベルトは算数の宿題が終わると、今度は国語の宿題を始めた。遺跡の発掘や考古学の仕事が書かれている本文を読み、質問に答えるというものだった。「8歳で考古学?」街全体が遺跡のような、イタリアらしい宿題だと感心してしまう。
アルベルトとユーロスター そして驚いたことにシニョーラは、日本文学に精通していて「イタリア語訳の源氏物語も全て読んだわ」と言った。だから漢字の話になると興味津々目を輝かせ、漢字が偏と作りで意味を成すこと、象形文字が漢字になる過程を紙に書いて見せると、とても感動してくれた。
 「もっと!」とチョコをねだるアルベルトが、「もうないわよ」と冷たく言われいじけているので、私は持っていた落花生キャンディーを二人に渡した。すると「Buono Buono!(おいしい、おいしい!)」と大受け。イタリア北部は特産物であるヘーゼルナッツ入りチョコやお菓子をよく食べるので、親しみやすい味だったのだろう。
 ボローニャに着く頃には、シャイだったアルベルトも少し打ち解けていた。シニョーラが私に「帰りは何時のユーロスターなの?」。チケットを見せると、なんとアルベルト達と同じ電車だった。車両も7号車と8号車の隣同士。「何という奇遇!」と思いながら、ボローニャで手を振って別れた。
ミラノの川 そして帰りのユーロスターがボローニャに着いてすぐ、見覚えのある男の子が近寄って来た。アルベルトだ! アルベルトが恥ずかしそうに母親から預かった紙切れを差し出す。そこには携帯電話の番号とメールアドレスが書いてあった。
 ミラノ中央駅で写真を撮って別れた後も、交流は続いている。「ミラノの家に遊びに来てね」と言われているのだが、残念ながらその後ミラノに行くチャンスがない。メールで送られて来た写真の中のアルベルトの、驚くような成長ぶりにちょっと焦りを感じつつ、二人との再会を楽しみにしている今日この頃である。


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