ひとり歩きも悪くない
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 1.たからもの

 2.恐るべき!
  怒りのエネルギー

 3.私に乾杯!

 4.怖いものはない!

 5.星に気合いを!

 6.焼肉の呪縛

 7.結婚までのカウント
  ダウン

 8.最後のメッセージ

 9.母か女か・・

 10.派遣だから出来たこと

 11.孤独なクリスマスに
   さようなら

 12.母との距離

 

 

 

 


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様々な理由からひとりで頑張って生きている女性達の、心のつぶやきと体験を
ショート・ショ-トのストーリーにしました。
これは実際のエピソードをもとにした、フィクションです。

ひとりで頑張ってる女(ひと)に読んでもらいたい!



恐るべき!怒りのエネルギー

 通勤の途中、下りの階段で躓いた。
『えっ、筋肉痛?』何か筋肉痛になるようなことしたかなぁ?あっもしかして・・。そうだ!人気のお弁当屋さんのハンバーグ弁当を買おうとして、お昼にダッシュしたのを思い出した。でも、確かあれは三日前のことだった。今頃筋肉痛なんてトホホだわ。
 私、芦田加奈子33歳、OL。何度か部長から肩叩きをされたが、それに屈せず今に至る。
現在社内のアイドルは南真知23歳。半年前に入社してきた。意外とかわいい。ただ男にだけ媚びるような甘ったれた話し方は、許せない。まぁまた新しい新入社員が入ってきたら、アイドルの座も危ないだろう。
 月曜の朝の恒例行事になっている朝礼が終わり、慌ただしくお茶出しが始まった。といっても、もう古株の私は出る幕なし。男子社員だって、若くてかわいい娘に入れてもらった方が嬉しいでしょ。
 『うわー、成績の上がらない営業の高野がまた部長から怒られてる。』高野は私と同期だ。いつまでたってもうだつがあがらない。こんな時はやっぱり男でなくてよかった〜とつい思ってしまう。
 でもホントにいつもいつもペコペコ頭を下げて可哀相なくらいだ。高野が女だったら、きっとまっ先に肩叩きされたに違いない。
 『そう言えば・・高野って何かに似てる。特に緊張しているのか、両手を体にくっつけて頭をペコペコ下げる仕草が確か・・そうだ!水族館で見たオットセイだ。ハハハ。』
「加奈子先輩、何ひとりで笑ってるんですか?」
「えっ、私笑ってた?」
「ええ。ニヤニヤしてたと思ったら、声までだして笑ってましたよ。」
『やばい!声まで出して笑ってたなんてそれはやばいよ。』
「ちょっと、トイレ行ってくるね。」
 なんか今日は調子がおかしいぞ。トイレの便座に座って仕切り直ししようと一番奥のトイレに入ったのが運の尽き、いやいや私の人生の大転換期の始まりだった。
 扉の外から聞き覚えのある南真知の声が聞こえてきた。
「加奈子先輩ってもうそろそろ34でしょ。もう会社辞めればいいのに。でもどう見ても寿退社できそうな人じゃないわよね。営業の高野さんも言ってたけど、部長の肩叩き突っぱねたんですって。それに入社当時から顔と体つきががアシカに似てるってからって、同期の間じゃ『アシカカナコ』って呼ばれてたんですってよ。笑っちゃう。」
『知らなかった。同期のオットセイからアシカに似ていると言われていたことも、『アシカカナコ』と呼ばれていたことも・・。』
 しばらくは放心状態でトイレから出られなかった。私にとっては、部長から肩叩きされた時以上のショックだった。
『加奈子よ落ち着け落ち着け。そうよ、何も聞かなかったことにしよう!私が会社に残る選択をした時、ある程度の誹謗中傷を受けることは予想してたじゃないの。』
 私は悔しさと悲しさ、そして惨じめさをひた隠し、何ごともなかったかのように席に戻り仕事を続けた。

 そして一年後、このままこの会社で歳をとり、アシカが象アザラシになったと言われる前に会社を辞めることにした。もちろん、真知のアイドルの座が次の新入社員、春名さやかに奪われるのを見届けた後に・・。

 私は会社を辞めたあと資格を取得し、老人介護の仕事を始めた。あの時の怒りが私にエネルギーを与えてくれたのだ。そして今はおじいちゃんやおばあちゃんに「アシカに似てるね。」と言われても、昔『アシカカナコ』って呼ばれてたんですよ!と笑って言える。
 芦田加奈子、現在36歳。改めて自分がアシカに似ているんだと再認識する日々を送っている。

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