ひとり歩きも悪くない
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 1.たからもの

 2.恐るべき!
  怒りのエネルギー

 3.私に乾杯!

 4.怖いものはない!

 5.星に気合いを!

 6.焼肉の呪縛

 7.結婚までのカウント
  ダウン

 8.最後のメッセージ

 9.母か女か・・

 10.派遣だから出来たこと

 11.孤独なクリスマスに
   さようなら

 12.母との距離

 

 

 

 


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様々な理由からひとりで頑張って生きている女性達の、心のつぶやきと体験を
ショート・ショ-トのストーリーにしました。
これは実際のエピソードをもとにした、フィクションです。

ひとりで頑張ってる女(ひと)に読んでもらいたい!



星に気合いを!

 祖母はよく「私は霊感が強いんだよ」と自慢していた。私は半信半疑だったけど、年寄りの言うことだし、なにより祖母はとてもおもしろい人だったので、いろんな話をした。
あの日も出し抜けに、
「おじいさんと一緒になったのは、神のお導きだったんだよ」
と祖母が言いだした。
「結婚なんてもんは気合いが大切なんだ。気合いが足りないからおまえは結婚でないんだよ!」
 ちょっぴりカチンときたが、37歳でまだ独り身だから、何も返す言葉が見つからなかった。回りを見れば数年前に友人の出産ラッシュが終わり、育児に追われる彼女達は遊んでもくれなくなった。『あーそろそろ結婚したいなぁ』という焦りにも似た気持ちが、この頃より高まっていた時期だった。祖母に見透かされた?
「神のお導きとか、気合いが足りないって言われても・・。どうすればいいのよ?」
「おばあちゃんはね、気合いで、流れ星にお願いしたのさ」
「え~?」
祖母から流れ星に願い・・なんて、そんなロマンチックな言葉が出てくるとは思わなかった。それも気合いでってどう言うこと?
「流れ星に気合いで何お願いしたの?」
「お嫁に行きたい!って願ったんだよ」
「うわー、ベタな願いごとだね」
「心から思っていることを願わないで、どうするんだい」
祖母の時代は早婚、見合い結婚は当たり前の時代だった。22歳迄独身だった祖母は、周囲の人達からかなり白い眼で見られたらしい。でも小さな村に、結婚相手となるべき男子は存在せず、いたためれない気持ちで家出した時、今は亡き祖父と知り合ったのだ。
「東京で星なんて見えるかなぁ。ましてや流れ星見るなんて宝くじ当てるみたいな確率だと思うよ。万が一見れたとして、願いごとを言う時間なんて・・絶対に無理!それこそ神業だよ」
「だから気合いが必要なんだよ!気合いを入れて心から願ってごらん、絶対に叶うから。人生捨てたもんじゃないさ」
そんな会話をした数カ月後、祖母は眠るように息を引き取った。

四十九日の法要が過ぎたある日、私は母に尋ねた。
「前におばあちゃん、おじいちゃんと一緒になったのは神のお導きとか、気合いで流れ星に願ったからだとか言ってたけど、本当の馴れ初めは何だったの?」
「おばあちゃんそんなこと言ってたの?」
母は大声で笑いながら、祖父母の馴れ初めを話してくれた。
祖母が家出した先は、その頃祖母が針仕事を習っていた先生の実家だった。そこは旅館を営んでいて、時代も時代だったし、星がとてもきれいに見える所だった。昼間は旅館の手伝いをしながら、祖母は三日三晩流れ星に願いごとを続けた。
結局風邪を引いて寝込んでしまったのだが、その旅館で板前をしていたのが、祖父だった。祖父の作ってくれたおかゆが縁で、ふたりは結ばれたのだ。
「三日三晩流れ星に願いごとを続けたんだ・・。それがおばちゃんの気合い!だったんだね。でも最後はおかゆが縁だなんて、食いしん坊のおばあちゃんらしいね。」
 仏壇の祖父母の写真はいつものように笑っている。
「気合いかぁ。私もそろそろ気合い入れてみようかな。おばあちゃんが言うみたいに、人生捨てたもんじゃないよね!」
 その夜久しぶりに星空を眺めた。もちろん流れ星は見れなかったけど、東京でもまだこんなに星が見れるんだ、とちょっぴり嬉しくなった。おばあちゃんがあの時見た星は、今も輝き続けている。

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