ひとり歩きも悪くない
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 1.たからもの

 2.恐るべき!
  怒りのエネルギー

 3.私に乾杯!

 4.怖いものはない!

 5.星に気合いを!

 6.焼肉の呪縛

 7.結婚までのカウント
  ダウン

 8.最後のメッセージ

 9.母か女か・・

 10.派遣だから出来たこと

 11.孤独なクリスマスに
   さようなら

 12.母との距離

 

 

 

 


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様々な理由からひとりで頑張って生きている女性達の、心のつぶやきと体験を
ショート・ショ-トのストーリーにしました。
これは実際のエピソードをもとにした、フィクションです。

ひとりで頑張ってる女(ひと)に読んでもらいたい!



母か女か・・

   父親の顔も知らない息子が、今日結婚する。
 この子がお腹にいた時、私は夫と別れた。だから息子は父親の顔を知らない。自分がだんだん父親に似てきたことさえも、本人は気付いていないだろう。
 息子に母子家庭の不憫さを味わわせたくなくて、幼稚園、小学校、中学校・・父兄同伴の行事の度に、男友達に頼んで出てもらった。それが息子の為だとずっと信じていたから。
 結婚式の数日前、いつものように夕食を食べていた息子が、「僕は、お母さんさえいれば良かったんだ」。私の箸が止まった。息子は何もなかったかのように「この肉じゃが旨いよ。でももう食べられないんだね」と言って、寂しそうに笑った。私は「食べたくなったら帰って来ればいいじゃない」と穏やかに話しながら、頭の中では「お母さんさえいれば良かったんだ」の言葉が駆け巡っていた。
 入学式、卒業式、学芸会、運動会・・。息子の為だと思って幸せな家族を演じて来たのに、息子は私の為に、自分を押し殺し無理矢理笑っていたのか・・。そう思うと悲しかった。私より息子の方がはるかに大人だった。私はやっと我に返った。
 私は母親より女としての自分を最優先させていたことを、本当は知っていた。全て自分の見栄だということもわかっていた。息子の友達の前で、料理上手の元気で若々しい母親を演じていたのも、単に私のエゴだったのかもしれない。
 でも・・「お前を生んで良かった。お前の母親になれて良かった」その気持ちだけはウソじゃない。なのにその一言が素直に言えなかった。
 結婚式場に向かう車の中で、息子が窓の外を見つめたまま「母さん、生んでくれてありがとう」ポツリと呟いた。一番嬉しい言葉だった。
 タキシード姿の息子が、かわいい花嫁に微笑むのを少し遠くで見つめながら、「生まれて来てくれてありがとう。あなたの母親になれて本当に良かった」今、心からそう思っている。堪えきれず嬉し涙が溢れた。


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